２００２年１２月２９日から約２週間ヨルダンとイスラエルに行った。
　　　　初めて行く中東への旅は、不安と憧れの入り混じった感慨を胸に出発することとなった。

　　　　
　　　　（アカバへ行く）

　　　　デザートハイウェイを走る

　　　　次の日は早く起きて、もう起きていたハシムさんの写真を撮った。「これからアカバへ行くんですよ」というと、「元気でまたナ！」と言ってくれた。うれしかったよ。
　　　　ワヘダットターミナル行きのバスに乗るためクライシュ通りまで行った。ワヘダット行きのバスが止まってるはずの青果市場の横に行くと、どの運転手もワヘダット行き
　　　　のバスはないと言う。一本上の道にあるセルビス乗り場で探せといことらしい。行くと数台のセルビスが止まっていて、一番後ろのセルビスがワヘダットへ行くらしい。
　　　　すでにもう二人乗って待っている。ボクが行ってくれというと四人乗せたいみたいですぐ出発しない。セルビスによってははよっぽど客が集まらないかぎりは四人
　　　　乗せるみたいだ。それからしばらくして四人目がやってきて出発した。１０分くらいでワヘダットに着いた。アカバ行きのバスはすぐ見つかった。初めての大型バスだ。
　　　　ちょうどよくすぐにでも出発しそうな雰囲気だった。３ＪＤを払って、荷物をあづけて空いていた一番前の席に座った。もう一方の一番前の席にはすでにアラブ人の
　　　　男の子と母親らしい二人が座っていた。すぐに出発しそうでしないのがヨルダンのバスだ。結局３０分くらいしてからバスは出発し、ターミナルを出てすぐガソリンを
　　　　給油してから走り出した。アンマン市街をすぎると、土漠と砂漠の光景ばかりとなる。いわゆるデザートハイウェイをひたすら走る。１時間ちょっと走って、バスは
　　　　休憩のために止まった。休憩所にはトイレや売店などが少しある。ボクはシャイを買って飲んだ。休憩所を出たところに裸足の少し知恵遅れの感じの男の子が、
　　　　バスの客相手に物乞いをしていた。今回の旅で初めて見た物乞いだったんだけど、ボクに「お金ちょうだい」という仕草をするその子に１／２ＪＤコインをやった。
　　　　これまでいろんなとこで物乞いにあったが一度もお金をあげたことがない。それは自分の基本的な考え方であり、一度も躊躇したことがない行動だったんだけど、
　　　　そのときはなんのためらいもなくコインをわたしていた。ていうか、そんな自分を見て不思議な感じだった。なぜだろうなぁ。今だにわからない。
　　　　２０分くらいの休憩タイムが終わって、バスはふたたびハイウェイに戻り走りだした。途中で左手に大きな街が見えてきた。きっとあれがマアーンの街なんだろう
　　　　なぁと思った。それからさらに走ったところに検問所らしいところがありバスは止まった。ヨルダン兵士がバスに入ってきてみんなが何か出すカードみたいなものを
　　　　見てまわっていた。ボクには何も見せろとは言わなかったが、そのうち２人の青年が降ろされて検問所に連れていかれた。何をやってるのかまったくわからないが
　　　　一人だけ戻ってきて、兵士が運転手になにか話してバスは走りだした。あのひとりの青年はどうしたんだろうと思ったが、すぐにそんなことも忘れていた。
　　　　バスはずっとカセットテープをかけていたんだけど、テープが延びてるのか最後の方はどうしようもなくダラダラの音になっている。一番前は特によく聞こえるので
　　　　間延びしたアラブ音楽にトホホ状態だ。それでからかはわからないが、横の男の子が自分の持ってるテープを手にしてさっきからかけてくれと言わんばかりだった。
　　　　でも言い出せないらしい。ボクもこんなのよりは、子供が聞きたいんだから流行のアラブミュージックだろうと思い、「この子がテープをかけてほしいようだけど」と
　　　　車掌のオジサンに言うと、ブツブツと運転手と話していた。なんかシカト状態だったけど、しばらくしたら「かけてやるよ」という風にその子のテープをとりカセット
　　　　に入れてくれた。そしたら、今まで流れていた音楽とちっとも変わらなかった。きっと違うんだろうけど自分には同じにしか聞こえなかった。それもやはり途中で
　　　　ゆるゆるになって。どういうこと！？そうこうしてるうちにバスは今までなかったような山を上り始めた。雨も降り出して途中から霧がものすごくて、窓の外がほとんど
　　　　見えないくらいになってきた。バスはノロノロと長い時間走る。下りになってからしばらくするとやっと霧も晴れてスピードもあがってきた。ここからはデザートという
　　　　より、小さな山とか崖が連なるところが増えてくる。変わった形の岩や山肌が面白かった。もうすぐ行って左に行くとワデェ・ラムだろうなぁと思ったりしてた。
　　　　それから途中でバスは２〜３度止まり客を何人か降ろしていった。工事中のところをすぎると最後の長い坂を上りはじめる。また雨が降り出しそうだった。
　　　　下りになりしばらくすると山と山の間に青い空間が広がってくる。それがだんだんよく見えてきて、あぁ海だ！と、とってもなつかしいものを見たようなうれしさが
　　　　浮んだ。バスはどんどん下っていって港のコンテナヤードが見えたりした。右折してしばらく行くとアカバの街に入る。ターミナルで止まったバスを降りて、
　　　　バックパックを受け取ろうと荷物入れをのぞいたらたくさんの荷物の上にハトが３羽いて、こっちを驚いたように見てる。なにこれ？イルージョン？ていうか、
　　　　受け取ったバックパックにハトの糞がついてるんだけど。どーゆーこと！？

　　　　紅海の街アカバ

　　　　目指すホテルは案外近くにあった。ちょっと遠回りしてしまったけど。シーズンオフだかなのか「ペトラホテル」はすいてるようだった。５ＪＤでバス・トイレ、エアコン
　　　　ＴＶつきだ。時間はもう２時をすぎていた。荷物を置いてしばらくしてから海へ行ってみた。初めての紅海だ。そして対岸はイスラエルのエイラットで、少し左は
　　　　もうエジプトだ。そして、ここから左に何キロか行くとサウジアラビアなのだ。海を眺めながら、シナイ半島ってアフリカなのかなぁ、とか変なことを思ったりしたり、
　　　　中東してるなぁ、とミョーな感慨にひたったりしていた。
　　　　ゴールドボートという観光客相手の小さな船がいっぱい泊まってて、クソガキが乗れ乗れとうるさい。あと馬とラクダもだ。海岸を左に歩いて行くと大きな広場
　　　　があってスピーカーで音楽を鳴らしていた。テーブルとかもあって公園みたいな感じだ。そこに考古学博物館ってのがあって、その中にアカバ要塞があった。
　　　　どってことない小さい建物だったけど。アラビアのローレンスが活躍してたころのものらしい。引き返して海岸に戻るとアラブ人親子が楽しそうに泳いでた。
　　　　やはり女性は肌を見せられないので、かあちゃんは海岸で座って見てたけど。オヤジはずいぶん張り切ってる。ていうか、アラブ人が海で泳いでのを見るのって
　　　　初めてのような気がする。水がとってもきれいだよ。がぜん泳ぐ気になった。一応あのイケてる水着ははいてきたんだけど。でもさすがに躊躇するなぁ。
　　　　しばらく迷って服をぬいで海に入ってみた。気温自体あったかいので全然泳ぐのは無問題だ。ボートや馬のクソガクがにやにやして見てたが、気にしないで泳いだ。
　　　　アラブ人のオジサンがうれしそうにこっちを見てるゾ。仲間意識全開かぁ！？．．．そうなると、急にちと恥ずかしかったりする。ビミョーだな。
　　　　しばらくしたら急に雨がポツポツ降り出してきたので水からあがった。アラブ人オジサンはそれでも元気いっぱいだ。泳いでいるというより波に遊ばれてるんだけど。
　　　　それからビーチの海の家？のイスで雨がやむまで待っていた。急に腹が減ってることを思い出した。今日はなにも食ってないなぁ。もう３時すぎてるもんなぁ、
　　　　と思いながら小ぶりになったので街を歩いてみることにした。ピザハットのとなりにシュワルマを売ってる店があったので入ってみた。ていうか、ファーストフード？
　　　　買って歩きながら食べようと思いオーダーしたら１．５ＪＤもする。いくらリゾート地ていっても高すぎじゃん。まあまた探すのも面倒くさいのでそのまま買った。
　　　　出てきたシュワルマを見て驚きだ。何これ？まるでマックじゃん。とても歩きながら食べるわけにいかないので店で食った。食ってると、黒のスーツ着た変な
　　　　アラブ人が数人入ってきたりした。いきなり全員がトイレに入って、出てきたら携帯で英語まじりのアラブア語？しゃべってて。２万ドルを受け取りに行くとか、
　　　　用意しとけとか、なんでしょう？アラビアンマフィア？．．．それからシュワルマ１０セットくらいオーダーしてテイクアウトして行った。商店街の団体旅行？
　　　　店を出てから、アカバの街をしばらく歩いてみた。海岸付近より山側に多くの住宅が建ち並び、思ったより大きな街のようだ。そしてヨルダンで唯一の港だ。
　　　　ホテルに帰って少しＴＶを見たりしてたら、となりの客が帰ってきたみたいで、３人くらいの英語の大きな話し声がしだした。時間を見たら６時をまわっていたので、
　　　　早いけど夜飯に出かけた。リゾート地なのでレストランらしきところは結構高い。結局ピサハットでパスタとサラダバーにした。それでも３ＪＤだ。　　　
　　　　食事が終わって、また海岸へ行ってみた。夜の海岸はアベックが多い。世界共通だナ。男ひとりでくるもんじゃないと思った。海岸の砂浜では、アラブ人の
　　　　家族が敷物の上にコンロやガスボンベを持ち込んでＢＢＱらしきものをしていた。それもひと家族だけじゃなく、あっちもこっちもって感じで。アカバではこれが
　　　　今流行のリゾートライフなのかなぁ？そのうちどこかのＢＢＱで鉄板に火が燃え移ったのか、すごいことになって家族みんながあわてふためいているのを見た
　　　　のには笑ってしまった。女性はあの黒い衣装なのでＢＢＱにはちと違和感があったりする。余計なお世話ちゅやぁ余計なお世話なんだけど。
　　　　海岸で笛を吹いてる子供を見かけた。声をかけてみたけど、一所懸命吹いている。言葉がわからないのもあるんだけど。何か言い出したんだけどわからない。
　　　　暗闇のなかに浮かぶ対岸の綺麗なイルミネーションを眺めながら、向こうからはこっちがどう見えるのかなぁと想った。向こうとこっち。泳いでもいけそうな距離は、
　　　　どうしても超えられない遠い遠い隔たりがあるのかなぁ、と、そんなことを想った。
　　　　明日はどうしよう？ペトラへ行くのがフツーなんだろうけど、写真に載ってるような遺跡みてもなぁ、とかワディ・ラムってどうなんだろう、とか思ったりして。


　　　　　　　　　　　　　　　　　

　　　　　ハシムさん　　　　　　　　　　　　　　　デザートハイウェイ　　　　　　　　　　砂漠の中をひた走る　　　　　　　　アカバの対岸はエイラット　　　　　　　　　　　　　　

　　　　　　　　　　　　　　

　　　　紅海ではしゃぐアラブ人　　　　　　　　ボリューム満点のシュワルマ　　　対岸は綺麗なイルミネーション　　　海岸で笛を吹く子供


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