 １９７５年レバノンでイスラム教徒とキリスト教徒のあいだに紛争が起こり内戦状態となりました。 レバノンはもともとアラブの中にあってキリスト教徒の比率が高く、宗教的な派閥の均衡のうえに政権がなりたっていました。そんな状況のなか に、１９７０年ヨルダン内戦で追放されたＰＬＯをはじめとするパレスチナ闘争組織が入り込んできたわけです。 レバノン内戦 １９７０年ヨルダンを追われたＰＬＯはレバノンにその拠点を移します。１９６９年にカイロで調印されたレバノン・パレスチナ協定により、レバノン 政府はＰＬＯの受け入れを認めていました。レバノンはイスラム教スンニ派、イスラム教シーア派、キリスト教マロン派などの宗教的な均衡に成 り立っている国です。そんなレバノン南部には「ファタハランド」と呼ばれるまでになった、実質的にＰＬＯの領土が形成され、多くの闘争組織の 育成基地として確立されていったのでした。 １９７５年パレスチナゲリラのレバノンでの活動に不満をもつキリスト教徒とにパレスチナ人、イスラム教徒のあいだに紛争起こります。この紛争 は内戦状態に発展していきます。この状態に１９７６年シリアが軍事介入をし一時停戦状態になります。しかし、このシリアの政治的、軍事的 介入が、この内戦をより複雑化させていきます。レバノン内戦はこの後も多くの宗教各派の抗争に発展していき１９８２年には国連の平和維持 軍が駐留しますが、これも多大な被害を受けることになります。 ＰＬＯはレバノン南部からイスラエルにゲリラ活動を続けていました。これに手を焼いたイスラエルは、１９７８年レバノン南部に侵攻し（リタニア 作戦）パレスチナゲリラを一掃する作戦を展開します。 １９８２年６月イスラエルは本格的なレバノン侵攻（ガリラヤ平和作戦）をおこない、ベイルートにまで進軍します。ベイルートのＰＬＯ本拠が攻撃 されＰＬＯは撤退をよぎなくされチュニジアのチェニスに移動します。この後ファタハ内部で反乱が起き、レバノン北部に残っていたファタハ残党 も翌年には撤退します。ＰＬＯのレバノン撤退はイスラエルに対する闘争を困難にし、アラファトは方針変更をしていくことになります。 レバノン内戦はパレスチナ難民にも多大な犠牲をもたらしました。１９８２年９月イスラエルが包囲していた西ベイルートのサブラ・シャティーラ難 民キャンプでキリスト教マロン派民兵のファラジストによる大虐殺がおこります。この事件はイスラエル軍がファラジストのキャンプ侵入を許可し 難民のキャンプ脱出を阻止したことにより大きな犠牲を生じさせました。この事件の状況は当時のイスラエル軍責任者のシャロン（現首相）に も報告されましたが、シャロンはその報告を無視したとされています。そして国連がこの事件の調査に乗り出し、最終的にベルギーの法廷に 提訴されます。イスラエルでもこの事件の４０万人にもおよぶ抗議集会が開かれました。イスラエルは１９８５年レバノンから全面撤退をします。 １９８６年にはイスラム教シーア派のアマルが最潜入したＰＬＯ兵士とキャンプ戦争をくり広げます。アマルは当初ＰＬＯと共闘を組んでいました が、シリアの支援を受けるようになり次第にＰＬＯと敵対するようになっていきます。キャンプ戦争ではアマルによって封鎖されたパレスチナ難 民に餓死者が出る状況まででます。１９８９年１０月レバノン国会議員評議会が国民和解憲章を採択し内戦が終結しました。 この内戦のなかでイスラム教シーア派のヒズボラが結成されます。イラン革命の影響により生まれたこの組織は、イランの支援を受けイスラエ ルが撤退した後もレバノン南部で、イスラエルにたいする抵抗活動を続けます。 ファハド提案 １９８１年サウジアラビアのファハド皇太子がパレスチナ和平に関する提案を発表した。この内容は「ヨルダン川西岸とガザ地区に東エルサレム を首都とするパレスチナ人国家を建設する。パレスチナ以外の難民には帰還または賠償を行う。この地域のいかなる国家にも平和に存続する 権利を保証する。」というものでした。この提案に対しアラブ諸国はおおむね賛同しますが、事実上イスラエルを承認するということにたいしては 抵抗がありました。 １９８２年レバノン内戦が激化するなかで、アメリカのレーガン大統領が「新たな出発」といわれるパレスチナ和平案を提案します。これはキャン プデービッド合意をほぼ周到するものでしたが、占領地からのイスラエルの全面撤退をさらに明確にし、エルサレムの分割を明記してありまし た。ただパレスチナ人国家はヨルダンとリンクさせており、最終地位についても話し合いによるとしていました。この提案にイスラエルは拒否声 明を出します。 いっぽうアラブ側は１９８２年９月にモロッコで開かれたアラブ首脳会議で「フェズ提案」をアラブの統一和平案として採択します。これは前年の 「ファハド提案」をほぼ周到するものでした。この提案は実行されませんでしたが、アラブの統一意見として間接的にもイスラエルの生存を承認 するという新たな考えかたが示されたわけです。 |
