ＰＨＯ　ＣＨＩ　ＭＩＮＨ 　 　　朝早く目を覚ました。今日は７年ぶりのホーチミンを歩いてみる。 　　道で買ったフランスパンを近くの公園でかじりながら、今日歩くルートを考えた。最後の１日だから。 　　まずはベンタイ市場へ。もはやホーチミンのランドマークにもなっているこの市場のまわりには、さらに露天の店が出て、夜にはもっと 　　ヒトでごったがえす。シクロやバイタクも多く集まっている．．．と、そんななか「どこへ行きますか？ぼったくらないです！」と声をかけて 　　きたバイタクがいた。「ぼったくり」はすでにベトナムの文化になったようだ．．．な訳はないけど、自分的には超ウケた。て言うか、笑い 　　そうになった。でも我慢した。 　　ロレイ通りを歩きＲＥＸホテルを眺めながら「季節のなかで」という物語を思い出していた。ベトナム人作家が書いたこの小説はアメリカ 　　の映画にもなった。よっつのオムニバスに分かれた物語は、それぞれの関わりをもちながら、切なく流れていく。 　　そんなことを浮かべながら「ＭＡＪＥＳＴＩＣ」に行った。 　　ドンコイ通りの端にあるこのｈｏｔｅｌはホーチミンの顔でもある。７年前来たとき、ここのカフェでベトナムコーヒーを飲んだ。屋上のテラス 　　は昼間は営業してないけど、サイゴン河を見渡せる場所だ。 　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　Ｍａｊｅｓｔｉｃ　Ｈｏｔｅｌ 　　続いて、そのサイゴン川のほとりに。 　　７年前、ここでひとりの少年と出合った。少しだけ会話しただけだったけど、そのときの会話は今でもよくおぼえている。 　　もう高校生くらいになっているんだろうなぁ。て言うか、ちゃんとガッコへ行ってるんだろうか？とりとめもない想いのなかでまた、あのと 　　きのようにサイゴン川を眺めていた。 　　ドンコイ通りは見違えるように小奇麗な場所になっていた。そして日本人の女の子を何度か見かける。前きたときと様変わりだ。ホテル 　　サイゴンはあのときのままだった。 　　サイゴン大教会、中央郵便局から統一会堂へ。サイゴン大教会のそばでは結婚するカップルの記念撮影をしていた。アジアではよく見 　　かける光景だけれど。中国人はこれが超好きだ。人生の最大イベントなのは分かるけど、その表情とかポーズを見ていると「アイドルか 　　よ！」と、つっこみたくなるのですが、それ以上に笑ってしまうのです。 　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　アイドル気分？ 　　統一会堂前の広い公園はベトナム人の憩いの場でもある。木陰にはいると少し涼しい。 　　統一会堂と戦争証跡博物館のまわりの道には並木があり、他とは違う雰囲気がある。 　　市場まで戻って、向かいにあるＰｈｏ２０００とういフォーのチェーン店でフォーガーを食った。ファーストフード店のようなこの店のフォー 　　は、やはりマックのようにどの店でも規格とおりのフォーが出てくるのだろう。味は日本人には向いてるかもしれな。あたりはずれがない。 　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　　店を出てｔａｘｉに乗り今度はチョロンに向った。 　　チョロンはホーチミンの中華街だ。もともと中華系がベースの民族と言えなくも無いけど、ホーチミンは北部のハノイよりは中国文化が 　　色濃く残ってはいないのだろう。だから中華街があるのかも知れない。 　　漢字が多く目に付く街並も、ベトナムという国のなかでの歴史の影は薄れてきているのかもしれない。世界中にあるチャイナタウンのな 　　かで、個人的な継承は別とすると、アジアのチャイナタウンは独特な文化をもつものだ。その国の市民としての日常は、その国の文化 　　を合理的に受け入れて、その文化のひとつの担い手となりえている。 　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ビンタイ市場 　　チョロンの街にはそれぞれの通りでお店がかたまっている。布のお店が並ぶ通り、食材のお店が並ぶ通り、それぞれの顔がある。チャ 　　イナタウンには不似合いな教会もあるけど、やはり天后宮はこの街の精神的なランドマークだろう。ｈｏｔ　ｐｏｔのお店の裏では夜の仕込 　　みに忙しそうだった。 　　 　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ベトナムでは鍋料理屋さんが多くある 　　中央にはバスターミナルがあり、ホーチミンのいろんなところからここにバスが集まってくる。 　　途中道端でさとうきびジュースを飲んだりして、チョロンの街を歩き、またｔａｘｉに乗ってコープマートへ行った。生活水準が格段によくな 　　っているのだろう、フツーの市民がたくさん買い物にきていた。惣菜などのコーナーもあり、指させばビニール袋に入れてくれる。このス 　　ーパーにはＫＦＣがあった。ロレイ通りでもＫＦＣを見かけたが、この時期鳥インフルエンザの影響はないのだろうか。 　　コープマートを出て妙に愛想のいいｔａｘｉに乗ったんだけど、これがこの旅唯一のぼったくりだった。どうみても遠回りしているし、乗って 　　２〜３分してメーターの回転が異常に早いのにも気がついた。ここで降りると言うと、まだデタム通りまで行ってないヨ！言う。かまわず 　　金を払って降りた。でもこんな中途半端なところで。頭にくる！が、少し重いけど買い物したビニール袋を持って歩いて帰った。 　　途中、人民委員会がライトアップされたレタイントン通りを歩いた。ロレイ通りとのあいだにはホーチミンさんの像があり、特に夜はひと 　　びとの憩いの場所となっている。 　　ベンタイン市場のまわりには屋台も多くでて、昼以上の賑わいを見せている。ファングーラオ通りに面した公園では、多くのひとたちが 　　おもいおもいに時間をすごしている。夜はひとびとを生き生きとさせるようだ。 　　かつてサイゴンと呼ばれたこの街は、ホーチミンという名前よりやはり「サイゴン」という名前がいい。 　　それにしてもあのクソがきは今どうしているのだろうか．．． 　　アイツには「サイゴン」という街がしっくりくるのだ。 　　次の朝、ベトナムを出発する日だ。 　　あまったドンを両替するためにベトコム銀行へ行ったが、ここでは扱ってないと外国為替の窓口で言われた。「ここで扱っていなきゃ、 　　どこで扱っているんだよ！」と言ったけど、知らないと言う。ありえない話だ。結局空港で両替してくれるとこがあったけど、レートが超 　　悪かった。 　　タンソンニャット空港はノイバイ空港ではあんなに見なかった日本人がいっぱいだった。やはりベトナムはまだ人気があるのだろう。て 　　いうかホーチミンはやはりお手ごろにベトナムを味わうことができろところなのかもしれない。 　　短いあいだにベトナムを北から南に移動の旅で、凹むような出来事もあったけど、ベトナムはインドシナモンスーンを感じる場所だった。 　　７年ほどのあいだにホーチミンは様変わりしていた。ＣＯＯＬなクソがきには逢えなかった。ホーチミンはそんな少年には似合わないと 　　ころになってしまったということなのかもしれない。きっと「サイゴン」で暮らしているのだろう。